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臨床心理士・公認心理師・精神保健福祉士の特徴とその役割
臨床心理士・公認心理師・精神保健福祉士の特徴とその役割
「心理カウンセリングを受けてみたい!」と思って調べてみると、「臨床心理士」「公認心理師」「精神保健福祉士」など、様々な心理の資格に出会います。
どれも心の支援に関係する資格であるため、違いが分かりにくく、「結局、どの資格を持ったカウンセラーが1番信頼できるの?」と困惑してしまうかもしれません。
そこで今回は心の問題に取り組む専門家の資格「臨床心理士」「公認心理師」「精神保健福祉士」の3つをそれぞれ詳しく解説します。
臨床心理士
心の問題に取り組む「心の専門家」の証
「臨床心理士」は日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格で、同協会のHPによると、「臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の“こころ”の問題にアプローチする“心の専門家”」とされています。
臨床心理士の専門業務は以下の4つです。
1. 臨床心理査定
心理テストや観察などで得られた情報から、心の問題を抱えた人の特徴や最適な援助方法などを評価します。
2. 臨床心理面接
クライエントとの間で信頼関係を育みながら、様々な技法を用いて心の支援を行います。臨床心理士の最も中心的な専門行為です。
3. 臨床心理的地域援助
災害や事件で地域やコミュニティが被害を受けた際の支援活動や、生活環境の健全な発展を目指した心理的情報の提供・提言などが挙げられます。
4. 上記1~3に関する調査・研究
心の問題に関する技術的な手法や知識を確実なものとするため、基礎となる調査や研究活動に取り組みます。
臨床心理士の歴史と意義
戦後、日本でも教育・産業の領域にカウンセリングが導入されたのですが、十分な専門性を持たない教師や人事担当者がカウンセラー役を担うほかなく、「心の専門家」が求められていました。
そこに登場したのが河合隼雄です。河合隼雄はスイスでユング派分析家の資格を得て1965年に日本へ帰国し、大学院における臨床心理学の研修・教育体制の整備に尽力しました。
また、1982年には、心理職の資格化を推進する「日本心理臨床学会」が発足。大学院修士課程修了を要件とする「臨床心理士」資格の制定を目指しました。そして、1988年には「日本臨床心理士資格認定協会」を立ち上げ、12月に第1号となる臨床心理士1595名を世に送り出すに至ったのです。
このように整備された大学院カリキュラムと資格試験のもと、一定の質が保証されたカウンセリングを提供できる仕組みを構築した点が臨床心理士の大きな意義だといえるでしょう。
なお、現在でも臨床心理士の受験資格は
・日本臨床心理士資格認定協会が指定する大学院を修了(大学院によっては修了後の心理臨床経験が必要)
・医師免許取得者で、取得後2年以上の心理臨床経験を有する
の2つが主な要件となっています。
臨床心理士が活躍する領域
臨床心理士が誕生してから30年以上、現在では約4万人の臨床心理士が幅広い分野で活躍しています。
代表的な領域は以下の通りです。
●教育:学校や教育相談機関などで、子ども・保護者・教員などを支援します。
●医療・保健:病院や診療所、精神保健福祉センターなどで、心の問題を抱えた人をサポートします。また、保健センターでは子どもの発達相談などにも対応します。
●福祉:児童相談所・療育機関・障害者作業所・高齢者福祉施設などで、支援を必要とする人々を適切にサポートします。
●司法・矯正:家庭裁判所・少年院・鑑別所・刑務所などで、社会的処遇を決定するための心理面の評価や矯正のための心理面接などを実施します。
●労働・産業:企業内の相談室やハローワークなどで、労働者の心理面のケアや職場環境の改善、就業にあたってのサポートなどを行います
公認心理師
日本初の心理職の国家資格
「公認心理師」は日本で初めての心理職の国家資格です。2018年の第1回試験以降、第2回、第3回と試験を重ね、令和3年6月末日時点で約4万人が公認心理師として登録しています。
厚生労働省のHPでは、公認心理師の業務として、以下の4つが掲げられています。
1.心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
2.心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
3.心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
4.心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供
1は臨床心理士の「臨床心理査定」、2と3は「臨床心理面接」、4は「臨床心理的地域援助」とよく似ています。
また、公認心理師が活躍する領域も臨床心理士と重なっています。
公認心理師創設の背景
なぜこんなにも臨床心理士に似た新たな資格「公認心理師」が誕生したのでしょうか。その背景には医療の領域で働く心理職の身分や待遇改善を求める声が大きかったことが挙げられます。
医療の領域でも多くの臨床心理士が勤務していました。しかし、医療現場で働く医師や看護師が法に規定された国家資格であるのに対し、臨床心理士は民間資格であるため、法的な立場が曖昧でした。
その結果、診療の一部を担っているにも関わらず診療報酬を得られなかったり、身分が保証されていないため雇用が不安定であったりと、不利な立場に置かれていました。
そのため、早急な心理職の国家資格化が求められ、2019年に遂に公認心理師が誕生したのです。
公認心理師と臨床心理士どちらが信用できる?
先ほどもご紹介した通り、公認心理師と臨床心理士の専門業務はかなり似通っています。
ただし、「カウンセリングを受ける」という点で考えると、臨床心理士資格を持っているカウンセラーの方が安心です。
というのも、第5回公認心理師試験(2022年実施予定)までは経過措置として、「現任者」でも受験資格を得られるから。
現任者とは簡単に言うと「病院や学校など規定された施設で、心理支援を必要とする人の心理状態の観察・分析や、相談・助言・指導を5年以上行っていた人」のこと。
「5年以上の経験があれば大丈夫では?」と思うかもしれませんが、現任者の中には
・学校の教員
・精神科の看護師
・高齢者福祉施設の介護士
など、カウンセリングとは違った形での心の支援に取り組んできた方も多く含まれているから。
そのため、カウンセリングを依頼する場合、現時点では臨床心理士資格を保有するカウンセラーの方が質の良いカウンセリングを受けられる可能性が高いのです。
精神保健福祉士
メンタルヘルス不調を抱えた方の社会復帰を支援する国家資格
臨床心理士や公認心理師と同じく、心の支援の専門資格として国家資格「精神保健福祉士」があります。
精神保健福祉士は、精神科病院などの医療機関や精神障害を抱えた人の社会復帰の促進を目指す施設を利用している方を対象に、社会復帰に向けた相談・助言・指導・訓練などの援助を行う専門家です。
臨床心理士や公認心理師が心の問題のサポートを目指すのに対し、精神保健福祉士は心の問題によって困難になった「日常生活」の回復をサポートする役割であるといえるでしょう。
最近では精神障害を抱えた人だけでなく、メンタルヘルスに不調を抱えた方まで支援の手を広げています。
精神保健福祉士が活躍する領域
精神保健福祉士の多くは
●医療・保健領域(病院・診療所など)
●福祉領域(障害者福祉サービス事業所や発達障害者支援センターなど)
の2領域で活躍しています。
しかし、
●教育領域(各種学校など)
●司法・矯正領域(刑務所や更生保護施設など)
●労働・産業領域(障害者職業支援センターなど)
で働く精神保健福祉士も少数ながら存在しており、少しずつ活躍の場を広げています。
まとめ
「臨床心理士」「公認心理師」「精神保健福祉士」の特徴を表にまとめてみました。
資格の違いを理解して、自分のニーズに合った専門家を見つけてみてくださいね。
参考文献
*1 日本臨床心理士資格認定協会:臨床心理士の専門業務
http://fjcbcp.or.jp/rinshou/gyoumu/
*2 山崎孝明(2021)精神分析の歩き方 金剛出版
*3 大塚義孝(2010)臨床心理学の歴史と展望 氏原寛・亀口憲治・成田義弘・東山紘久・山中康裕(編)心理臨床大事典 改訂版 培風館 pp7-15.
*4 厚生労働省:公認心理師
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116049.html
*5 信田さよ子(2020)<改訂新版>カウンセリングで何ができるか 大月書店
*6 宮脇稔(2004)国家資格化の必要性
http://www.onyx.dti.ne.jp/~psycho/necessity.htm
*7 柏木一惠(2019)精神保健福祉士に求められる役割について 第2回精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000488346.pdf
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