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心理カウンセリングとは?医療との違いや実際の流れを解説
心理カウンセリングとは?医療との違いや実際の流れを解説
心理カウンセリングを受けてみたいと思っても、実際にどういうものなのかイメージできないと躊躇ってしまいますよね。
また、「心の問題を扱う精神科や心療内科と何が違うんだろう?」と疑問を抱いている人もいるかもしれません。
そこで今回は心理カウンセリングについて、精神科や心療内科といった医療との比較をふまえながら解説していきます。
心理カウンセリングとは?
一般的な医療の現場では医師が患者を診て「○○病です」と診断し、「○○病の治療には××という方法が効果的である」という専門知識に基づいて「この薬を飲んでください」「しばらくお酒は禁止です」などの指示を出します。「医師→患者」の一方向のコミュニケーションで治療を進めていくのです。
一方、心理カウンセリングでは、カウンセラーとクライエント(相談に来られた方)の双方向の対話を重視します。
その対話の中で、クライエント自身が「私は○○が嫌だったんだ」と悩みを引き起こしている要因に気づいたり、「もっと○○してみようかな」と自分なりの解決方法を見出したりと、1人1人に適した形で悩みの解決を図ります。
心理カウンセリングの流れ
一般的な心理カウンセリングの流れは以下の通りです。
初回面接(インテーク面接)
初回面接(インテーク面接)では、カウンセラーがクライエントの悩みを聴き、「どういったことで悩んでいるのか」「心理カウンセリングが解決に役立つのか」などを検討します。
心理カウンセリングが役立つ場合は今後の契約を行います。また、心理カウンセリングよりも医療や福祉などのサービスの方が役立つ場合には、他の機関を紹介することもあります。
初回面接は主に次の3つの手順で行われます。
1.主訴を聴く
「どんなことで悩んでおられるのか」を確認します。
ただし、初めて心理カウンセリングに来た方は不安や緊張でいっぱいでしょうから、カウンセラーはクライエントが話しやすいよう安心感や信頼感を提供できる関係「ラポール」の形成に努めます。
2.見立てを伝える
悩みは単にクライエント自身の問題ではなく、個人・家庭・学校や職場など様々な背景が関わっています。
例えば、「仕事に行くのがつらい」という男性クライエントが抱える悩みの背景には、
・個人要因:元々人と話すのが得意ではない。
・職場要因:営業部への急な異動で慣れない電話業務をすることになった。
・家庭要因:子どもが生まれたばかりで疲弊する妻をサポートしなければならない。夜泣きで十分な睡眠もとれていない。
などが絡んでいる可能性があります。
この時にクライエント本人だけを支援しても、職場や家庭の苦しい環境は変化していませんから、再びつらくなってしまいます。時には行政サービスを活用して子育ての負担を軽減したり、職場の上司に掛け合ったりと、心理カウンセリングよりも外部資源の活用の方が優先されるかもしれません。
このように悩みの背景にある絡み合った要因を探り、その上でクライエントを支援する手立てを検討するのが「見立て」です。そして、カウンセラーはクライエントに分かるように見立てを伝えます。
3.治療契約を交わす
心理カウンセリングは、カウンセラーとクライエントの「対話」によって成り立つものですから、クライエントが「どうすればいいか教えてください」という受動的な態度を取っていては、うまく進めることができません。
そのため、心理カウンセリングを始める前には「治療契約」を結びます。
治療契約とは、
・目標(心理カウンセリングのゴールをどこに定めるか)
・方法(カウンセラーとクライエントそれぞれの役割)
・ルール(心理カウンセリングの料金・時間・禁止事項など)
・カウンセラーの守秘義務
などを共有・確認する作業のこと。
お互いに「同じゴールに向けて一緒に進んでいこう」と手を取り合うための時間です。
もちろん、治療契約もカウンセラーが一方的に「これらを約束してください」と押し付けるものではなく、カウンセラーとクライエント双方が合意した上で交わされます。
心理カウンセリングを始める
カール・ロジャーズは、心理カウンセリングを進める上で必要な条件「カウンセラーの基本的態度」を示しました。それが以下の3つです。
1. 純粋性:カウンセラーがありのままの自分を受け入れていること
2. 無条件の肯定的態度:クライエントに対して「良い/悪い」などの評価をせず、尊重すること
3. 共感的理解:カウンセラーがクライエントの感覚や記憶などをあたかも自分のことのように知覚すること
カウンセラーは基本的態度を維持しながらクライエントの話を傾聴し、時には「もう少し詳しく話していただけますか」「その時、どんな気持ちになりましたか」など、クライエントの話をより深めていきます。
そして、クライエントはカウンセラーに対して話をする中で、自分の悩みの根本にある要因や、これからの生き方など様々な気づきを得て、生き方そのものを変容させていくのです。
心理カウンセリングの注意点
心理カウンセリングはクライエントが主体的に話すことが求められますし、話しているうちに嫌な記憶を思い出すこともあります。そのため、心や身体が弱っている人は心理カウンセリングがかえって負担となり、調子を崩してしまうことも。
心身に過度な不調を抱えている方は医療機関を受診して、ある程度調子を取り戻してから心理カウンセリングを利用する方が良いでしょう。すでに主治医がいる方は、心理カウンセリングを利用しても大丈夫かどうか確認し許可を得ることも大切です。
まとめ
医師が患者に一方的に指示を出して治療する医療と異なり、心理カウンセリングはカウンセラーとクライエントが双方向の対話を行うことで悩みの解決を目指す方法です。
心理カウンセリングでは、初回面接で主訴の聴き取りを行い、カウンセラーが見立てをクライエントに伝えます。そして、心理カウンセリングが役立つ場合には、カウンセラーとクライエント双方で合意の上で治療契約を交わし、心理カウンセリングへと進みます。
ただし、心身に過度な不調を抱えている方には心理カウンセリングがかえって負担となるケースもあるため、医療機関の受診を優先した方が良いでしょう。
参考文献
*1 磯邉聡(2017)学校臨床における「みたて」 千葉大学教育学部研究紀要 65 pp21-30.
https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/104425/S13482084-65-P021-ISOB.pdf
*2 島田涼子(2010)心理療法における治療契約の意味 心身健康科学 6(2) pp14-18.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhas/6/2/6_2_2_14/_pdf/-char/ja#:~:text=%E3%80%8E%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E5%88%86%E6%9E%90%E4%BA%8B%E5%85%B8%E3%80%8F%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A6%E6%B2%BB%E7%99%82,%E3%81%A8%E5%AE%9A%E7%BE%A9%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82
*3 野島一彦(2010)クライエント中心療法 氏原寛・亀口憲治・成田義弘・東山紘久・山中康裕(編)心理臨床大事典 改訂版 培風館 pp307-312.
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